【タイの弁護士が教える】貸した金の消滅時効(返済期限)は何年?

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お金を返してもらうにあたって重要なのは「消滅時効」です。今回は、タイでお金を貸した場合の時効と「時効を延長(ストップ)」するための対応策をタイ在住支援法律事務所の弁護士が解説します。

 

タイで知り合った知人や友人、職場の部下やビジネスパートナー、タイ人の配偶者(パートナー)やその親族などから「お金を貸してほしい」などと頼まれると断り切れずにお金を貸してしまうことがあるかもしれません。そして、お金を貸してもすぐに返してくれるだろうと思っていたのに、返済期日直前になって、相手から「返す気はあるけど、今はお金がないから少し待ってほしい」と言われ続け、結局、最後は相手と連絡が取れなくなってしまったなんてことはないでしょうか。

 

しかし、返済がない状態が長期間続くと「法的な消滅時効」によって貸したお金を返してもらうことができなくなる可能性もあります。

 

 

 

~目次~

◆ お金を貸した証拠について

◆ 借用書(金銭消費貸借契約書)について

◆ 消滅時効について

◆ 最後に

 

 

◆ お金を貸した証拠について


 

まず、時効を考える前に「金銭の貸し借りがあった」証拠については、しっかり押さえておかないと、借主から「お金を借りた事実はない」というような反論がされることも稀ではありません。

 

最近では、SNSが普及しているので、お金の貸し借りについてLineなどでのやり取りが残っている場合もあります。しかし、この内容には、「返済額(総額分)」や相手が「返済の意思を示している」こと、そして「支払い期限」等、法的に見た際に内容が不十分な場合は、法的に無効になってしまうので注意が必要です。

 

返済期限を定めていない場合は、貸した日から相当期間を経過した時点から5年経過、または相当期間権利を行使しないと消滅時効が成立します。

 

 

◆ 借用書(金銭消費貸借契約書)について


 

 

紛争が起きないように相手と友好な間に、「法的に有効な借用書(金銭消費貸借契約書)」を作成して事実を証明ができるようにしておきましょう。

 

タイにも公証人認証がありますので、借用書を公正証書の形にしていた場合には、日本の様にいきなり強制執行の手続きをとることはできませんが、後々、訴訟をしなくてはならなくなった際、債務者が債務の存在自体を否定して争ってきた場合に、異議申立ての分だけ、裁判が長引いて回収までの時間が伸びてしまうことになり費用対効果にも大きな影響を及ぼすことになってしまいます。その様なリスクを考えると、借用書は公正証書にしておくことをお薦めします。

 

 

 

◆ 消滅時効について


「消滅時効」とは、お金を貸していたが、長期間に渡ってお金を返すよう請求しなかった場合には、返金の請求ができなくなるという法制度です。更に、債権に関する消滅時効についてタイの民商法では、債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年、または、権利を行使することができるときから10年 ※裁判所の確定判決文(強制執行ができる段階)としており、どちらか早い方と規定しています。ですので、契約に基づく貸付金の時効期間は、裁判をしていない多くの場合は5年経過すると消滅時効が成立しますので、時効が迫っているという場合にはしっかりと対策を講じることが重要です。

 

消滅時効に到達してしまった場合は「お金を返してほしい」とメッセージなどを送ってみてください。これに対して、借主が「返済する意思」を表明したメッセージが届く、また、実際に少額でもお金を振り込んでもらえれば、「債務を承認」したとみなされ、時効の更新ができ、再度、お金の返還請求をすることが可能となります。しかし、相手から無視してしまった場合などは、消滅時効の到達と伴い請求権はなくなります。

 

時効が成立するかどうかは、次のような点に注意する必要があります。時効の期限が迫っているという場合には、債権者が次に挙げる法的手続きを踏むことによって時効の成立を止めて期限を更新すること、時効の完成猶予が認められています。但し、消滅時効期間がリセットされるわけではありません。

 

時効の完成が迫っているという場合には、すぐにでも時効の完成猶予および更新の措置をとる必要がありますが、いきなり訴訟提起という強硬的な手段をしなくとも、借主と連絡が取れている状況であれば、分割などでも返済方法や支払いプランを協議しても良いでしょう。警告書(内容証明郵便)での支払督促をしてみて、債務者から連絡があり、円満な協議ができる状況であれば協議による時効完成猶予の利用ができます。

 

時効の完成を更新する場合や時効の完成猶予を一時的に停止する手続きとしては、以下のものが挙げられます。

  • 内容証明郵便での支払督促 ※ タイでは「警告書」と呼びます
  • 民事請求(裁判・和解含む)※ 裁判所の確定判決を得てから強制執行できる
  • 催告(裁判上の請求などを行う前の暫定的な措置)
  • 強制執行(支払督促を申し立てる)

タイでは、「警告書」を郵送して、それに相手が支払いについて何の反応もなければ、訴訟を提起するという流れが一般的です。

 

 

 

◆ 最後に

結論として、借用書を作成している貸金についても時効が存在します。正確な消滅時効の問題は専門的知識が必要なため、時効によって大切な権利を失うことがないように早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。

 

時効完成前であれば直ちに状況に見合った措置を講じて、時効の完成を阻止することができます。「貸したお金を返してもらえない」、「消滅時効が迫っている」と悩んでいる方は、タイ在住支援法律事務所までお気軽にご相談ください。