自力で解決にあたる5つのリスクと結末

リスク回避、紛争、問題解決、

 

タイで法的トラブルに直面した時に、多くの方は、「自力でどうにか解決できるんじゃないのか・・・。」「トラブル相手との交渉は自分でできる!」と考え、直ぐに、法律事務所の法律相談へ駈け込んだり、弁護士へ依頼しようという感覚はなんじゃないかと思います。

 

しかし、問題やトラブルを抱えるご本人が、法律を知らないで、弁護士に相談もせずに自力で相手との交渉に及んでみたり、行き当たりばったりで証拠(有力でない・時には使えない)を集めたりして、自力で解決しようとした場合、どんな結末が考えられるでしょうか。

 

⑴ いつまでも平行線の交渉が続く

示談交渉は双方で納得できる合意点を探さなければ成立せず、自分で交渉に及んでも、その折り合いがつかなければ、いつまで経っても平行線の協議が続くことになってしまいます。

 

問題は、そんな交渉を続けていて知らない間に、事件の時効が消滅してしまうことでしょう。そんな場合、例え、有力な証拠を持っていても、その証拠はすべて紙くずと化してしまい、請求する権利自体がなくなってしまうのです。まずは、相手の主張を聞いて、自分の主張と相手の主張とを、どのように折り合いをつけるのか、相手に譲歩し過ぎず、自分にとって有利な交渉をして早期に解決していくのが難しいところでしょう。

 

 

⑵ 示談交渉が精神的負担になる

慣れない示談交渉や相手への対応に疲れ果てて精神的な負担になり、仕事や日常生活に支障をきたすことがあるようです。誠意を持って対応(口だけでなく、なんらかの誠意ある行動が伴う)してくれる相手なら、そもそも、最初から問題が起きていないことも多いのです。

 

ほとんどの場合、そんな相手を自力でなんとかしようとしても、結局、のらりくらりされて交渉が進まないばかりか、交渉の時は誠意を見せる(フリをする)けど、約束は実行されなかったり、「まぁ、それなら納得せざる負えない」と思わせられる提案をされて合意に至ったはいいが、後々、気が付くと、相手にとって都合のいいだけの提案をされていた。なんてことも起こります。

 

 

⑶ 弁護士の法定基準での高額請求が認められにくい

相手への請求額は、実際、弁護士が弁護士の法定基準で計算すると高額になり、示談金、損害賠償が大幅に増額する可能性があります。これは、弁護士や裁判所が使う基準(法定金利)を含むからです。この為、弁護士に依頼しないで、自分で示談交渉を行う場合に、弁護士の法定基準で計算した請求額は、相手に受け入れて貰えないでしょう。

 

示談交渉で弁護士の法定基準を認めて貰うためには、弁護士に依頼し、更に、相手にも弁護士がいれば、話は早くなります。当然、裁判所を挟んで交渉する場合も、弁護士や裁判所が使う基準(法定金利)が適応されます。その場合は、いずれにしても弁護士を絡ませて示談交渉をする必要があるでしょう。

 

 

⑷ 交渉相手に本気度が伝わらない

散々、自分で交渉に及んだ挙句に、結果、どうにも話にならないことから当事務所に訪れる依頼者がいます。よく耳にするのが、「交渉に応じないなら弁護士に相談する」「応じないなら、法的措置を講じる」と、相手へ交渉を持ち掛けてきたが、結局、相手との連絡が途絶えてしまった。という実例は非常に多いです。

 

交渉の結果次第では、行き着く先は訴訟を起こすことになりますが、裁判をやりたい人は、まずいないだろうし、実は、自分自身が相手よりも裁判をしたくないというのであれば、交渉では、ある程度のところまでは、自分から譲歩した交渉内容にしなければならないでしょう。しかし、問題は、それだと相手に本気度がまったく伝わっておらず、相手に、「むしろ、あなたの方が、裁判をしたくないからこそ、弁護士に委任してないんでしょ!」と思われてしまうことでしょう。

 

逆に、相手に「裁判に持ち込まれたくない」、本気で「このままだとマズいなぁ」と思わせることができれば、有利な交渉結果が早期に生まれる可能性は高くなるわけです。だからこそ、弁護士が相手へ交渉を迫ることにより、相手にとっては、「交渉に応じなければ、裁判に持ち込まれてしまうのではないか」と、現在の自身の不利な立場に真実味が帯びてくるというものです。

 

 

⑸ 交渉のやり方を間違うと、恐喝や脅迫になってしまう

交渉だから毅然として冷静に、その中で慎重に協議を行うべき場面も多いのですが、このあたりの調節は、非常に高度な話術や手法が必要になるだけじゃなく、事件当時者の場合では、難しいものがあります。

 

自分で交渉に及んだ場合、否応なしに相手の誠意のない言葉や態度に直面することになったり、自分自身の求める交渉内容や権利請求に対して、相手が、直ぐには応じることができない状況などを説明してきた場合、損害を被っている被害者は、自らに降りかかっている大問題なので、当然、そんな相手に接触すれば感情的になってしまい、実際、そんな相手に対して冷静で毅然たる対応ができるという人は、とても少ないといえるでしょう。 

 

そこで、万が一、相手へ行き過ぎた暴言を吐いてしまったり(侮辱罪)、相手を脅かすことを言ってしまったり(恐喝罪)すれば、相手方に責任追及をしていた側なのに、気がついたら自分が責任を追及されていたという事態になってしまうことさえあります。このように、逆に、相手に交渉の主導権を握られて、自分の交渉自体が不利になってしまうというのは絶対に避けるべきでしょう。

 

 

~ 結論 ~

初期段階から弁護士の法律相談に訪れたり弁護士依頼をするのは、問題が起きてからと誤解をされがちですが、結論としては、問題をこれ以上悪化させないため、問題を拡大しないために弁護士を依頼することは多大なメリットがあると言えるでしょう。

 

例え、弁護士を入れた方がメリットがあると理解はしていても、それでも、その場の損得勘定から自力で交渉を行うという選択肢もあるかもしれませんが…。結局、最後は自分じゃどうにもならずに、事態が更に悪化した状態になってから、当事務所に法律相談に訪れる方も少なくないのです。