東京で出会い、タイ娘と結婚した。
その結婚相手のタイ人女性は、偽造パスポートで日本へ来日し、働きながらタイの親元に仕送りしていた。結婚したそのタイ人の娘は小柄で病弱そうな娘だった。当時は、不法滞在者への警察による取り締まりも強化されていたので、タイに帰国させて半年後に入籍した。
その頃日本は「失われた二十年」の大不況に入りかけていて、私は8、9人の職人がいる職場で建築下請の仕事をしていた。しかし、その後仕事量は激減して行った。その為、職人も一人だけ残して細々と仕事を続けるしかなかったが、タイに居る妻には働かせなかった、病弱そうなので病気にでもなられては困ると思っていた。
私は長い間、質素な生活をしながら倹約貯蓄し、将来の為に積立て型の住宅購入や金の先物取引に投資したが、タイバーツの暴落の中で失敗してしまった。その矢先、得意先の倒産によって働いていた会社も倒産した。そのことをタイのバンコクにいる妻に告げようと会いに行った。「これまで通りの仕送りは出来なくなった」と告げた。
そんな私に妻は、
『仕送り出来ないなら出ていけ!』
『あんたの事など何とも思っていない!』
『あんたは、私の人生を壊させた。バカヤロウ!』
『日本人と結婚したのに、こんな貧乏な人生にされた』
『タイでは、貧乏は恥ずかしい事なのに、あんたは恥ずかしいと思ってもないのか!?』
そんな馬頭を私に浴びせる妻の姿に、昔の病弱そうな娘の面影はまったく無く、単なる怒り狂った小太りのタイのオバサンを見ただけだった。
「金の切れ目が、縁の切れ目」という、万国共通類例である。けっして珍しくも何ともない話だ。
以前、妻が、私に隠れて先物取引に投資していた時に私も離婚も考えたことがあったが、「不況の中で苦労させて申し訳ない」と思い止まった。
その時は、「タイの女は、金の無い男には、ハナもひっかけない」と思っていたが、自分が資金繰りに苦労していた時、タイから二百万円もの大金を送金してくれたこともあった。そんな大変な時期に自分を助けてくれた妻に対し、「タイ人女性も捨てたもんじゃない」と思った。
今、「こうなってしまったのは、自分の安価な同情心からの行動が、高価な後悔の念を残しながら夫婦の人生は崩壊した。
「金の切れ目が縁の切れ目」
万国共通の類例への仲間入りをして、私の結婚してからの仕送り人生と人生の大半の時間が終わった。25年の月日が過ぎていた。
某日本人男性 Tさん
※このストーリーは事実に基づいて、一部修正してあります。
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