タイのあるある娠詐欺(中絶詐欺)について
本稿では、タイ人女性との間に「妊娠詐欺(中絶詐欺)」が疑われる場合にどのように対応すべきかを、タイの法律を交えて解説していきます。
~目次(表示)~
◆ 妊娠詐欺とは
◆ 妊娠詐欺の手口
◆ 妊娠を告げられた
◆ 本当に自分の子供だったら法律的にどうなるの?
◆ 妊娠詐欺に遭った場合には「弁護士に相談」を
1. 妊娠の事実を確認する
2. 金銭を支払って解決する
3. 弁護士に介入してもらう
◆まとめ
◆ 妊娠詐欺とは
妊娠詐欺とは、実際には妊娠していないのに、妊娠したと嘘をついて、中絶すると装い中絶費用を請求したり、病院の検査代や診察料、慰謝料、休業損害(妊娠したことによって仕事を休んだ給与分の損害賠償)請求や家賃など、様々金銭の名目においてお金を騙し取ることです。
また、あなたではなく、他の男性やタイ人の夫(配偶者)の子供を妊娠しているとわかっているにもかかわらず、「あなたとの子よ」と嘘をついて中絶費用や慰謝料等を騙し取るケースもあります。この様な妊娠詐欺は、欺罔行為により金銭の交付を受けるもので、刑法上の詐欺罪(タイ刑法第 341 条)に該当します。
※タイでは、「人工中絶」について、2021年2月9日に改正刑法が発効し、原則、妊娠12週を超えていない場合に限り人工中絶が認められるようになりました。また、12週を超えて20週以下の場合は、医師や保健省が認定した医療専門家の判断によって中絶が可能です。
「美人局のケース」
タイ人の婚約者や夫を名乗る者が登場して、「妻と不倫し、妊娠までさせた慰謝料を払え」などと高額な慰謝料を請求してくるケースもあります。金銭を要求する過程で「金を払わないと、○○するぞ」などの脅迫行為があった場合には、その内容によっては、脅迫罪・強要罪に該当することになります(タイ刑法第392条)。
「結婚目的の詐欺ケース」
外国人との結婚を人生目標としているタイ人女性が、相手を繋ぎとめておくという目的で、詐欺が行われる場合もあります。男性が結婚を決断したとたんに「流産をした」と嘘をつきます。
タイでは、いわゆる風俗街における風俗店やカラオケ屋(日本にある一般のカラオケとはとは異なる形態で、ホステスが接客したり、風俗的なサービスもある店)で知り合ったタイ人女性や、外国人向けのゴルフ場のキャディーなど女性と関係を持った場合に、被害に遭うケースが多いですが、その他にも、マッチングアプリや出会い系サイト等で知り合った女性が相手というケースがあります。
◆ 妊娠詐欺の手口
加害者女性は、先述したカラオケ屋と称する飲み屋や風俗で働いているか、SNSや出会い系を利用して外国人ターゲットを探している傾向にあり、詐欺がしやすいターゲット男性の特徴としては、「男女関係には経験がなさそう」「お金を持ってそう」な男性を執念にターゲット探しています。風俗では、自然に肉体関係持つ流れとなりますが、出会い系などを利用した女性は、ターゲットが決定すると「肉体関係」を持つ方向へ誘導して「妊娠詐欺(中絶詐欺)」の準備をします。
性行為の際には、「今日は、安全日だから」「ピルを飲んでいるから大丈夫」などと言われ、避妊具(コンドーム)の装着」をしいないケースが殆どです。また、加害者女性たちは、この後、妊娠を理由にお金をせしめる際に利用する材料として、ターゲット男性の「住居地域やコンドミニアム名」、「既婚者かどうか」や「職場の名前や場所」など個人情報を可能な限り聞き出します。また、男性がトイレに行っている間や入浴中などに、ターゲット男性の鞄の中を漁るなどして、名刺やパスポートなどの写真を撮って個人情報を把握して入念に詐欺の準備をしていることが多く見受けられます。
◆ 妊娠を告げられた
いよいよ妊娠です。2週間前後経った頃「あなたの子供を妊娠した」とインターネットで入手した他人の「妊娠検査薬の陽性反応」や「病院のエコー」の写真をSNSのメッセージで送信してきます。
この段階ではまだ、「中絶はしない。子どもは産みたい」と言って男性を困らせるケースが多い様です。そして、病院の検査代や診察料、休業損害金や家賃の建て替えなどの金銭の名目で金を請求してきます。また、男性の言動や状況に応じて「中絶すると装い」中絶費用や慰謝料を請求してきます。
ここで、「病院への同行する」ことや「病院の診断書を求める」と、「私のことを信用していない、最低の男!」などと逆ギレします。また、相手からの請求の支払いを拒否すると、「日本の家族に連絡する」「職場に乗り込んでばらす」「裁判を起こす」や、「インターネットで公開」「警察に被害届を出す」、するなどと、様々な脅迫やプレッシャーをかけてきます。
ここまでの経緯の証拠をすべて保管しておきましょう。相手の嘘や金銭要求を証明するSNSなどのメッセージ、会話の録音、金銭を渡した事実を証明する相手の銀行口座情報や振込明細などが証拠になります。
また、この段階で妊娠詐欺であると決めつけて、相手からの連絡を「無視することは非常に危険」だということです。本当に女性があなたの子供を妊娠していた場合には、中絶が可能な期間が経過してしまうことで、出産することのみが選択肢になってしまいます。
◆ 本当に自分の子供だったら法律的にどうなるの?
もし、相手の女性が出産した場合、また、生まれた子があなたの子である場合は下記の法的リスクが付いてきます。
- 認知請求される ※法的に認知されれば、日本の戸籍に子供として記載される
- 養育費の支払義務を負う ※父親として認定されれば、養育義務が発生します
- 生まれた子に相続権が発生する ※子供は父親(被相続人)の相続人になります
◆ 妊娠詐欺に遭った場合には「弁護士に相談」を
妊娠を言及された際に、対処方法を間違えると大きな損害を被るなどのリスクを負う場合もありますので、妊娠詐欺の疑いがある相手と示談交渉をする場合は、弁護士に相談することをお薦めします。早い段階で阻止していかないと「脅迫や金銭要求は止まらない」と言っても過言ではないからです。あなたは、毎晩、眠れない夜を過ごすことになります。
【 妊娠詐欺のあった時、必要となる対応 】
1. 妊娠の事実を確認する
まずは、女性の妊娠の事実確認が必要ですが、妊娠検査薬やエコー写真のみから妊娠していると断定することは危険です。妊娠の事実確認するのに信用性のあるものとしては、病院の診断書(IDナンバーやフルネーム記載)が挙げられますが、これらも偽造である可能性は否定できませんので、弁護士を通して、本物か確認すべきです。また、タイ人女性の本名や住所などを明らかにして、備えておきましょう。
2. 金銭を支払って解決する
金銭を支払う場合にも、必ず女性の言う負担額が客観的に分かる書類(領収書や振込明細等)を確認しましょう。妊娠の事実が確認できて、女性に検査代や診察代などの負担が実際にあったのか、また、今後、男性側も負担すべき費用があるか判断する必要があります。
また、この段階で「子供は産む」と突きつけてくる場合もあります。これは、既婚者で日本に家族がある方だと、居たたまれない状況下だと思います。ですが、そんな状況に耐えられない場合、早く終わらせたいからといって、「その場しのぎで女性へお金を払ってしまった」という方がいらっしゃいますが、言われるがままに支払った後もそれで終わりではありません。色々と理由をつけて追加で金銭要求をされます。ですので、その様に安易に支払いをするのは絶対にやめましょう。
仮にお金を支払うとしても、相手との誓約書面を作成し、その条項に、清算条項「男性側が○○に対して、○○バーツを負担すること」や「これ以上の金銭請求はしないこと」、「当事者間に何らの債権債務がないこと」等の確認条項を定めることが必須です。清算条項を定めずにただ単にお金を渡してしまえば、これまでの事例では、請求名目を変えて次から次へと金銭請求をしてきて、その繰り返しとなってしまいます。ですので、必ず「合意書」や「誓約書」などの形式において作成し、双方で法的書面に署名を行った後に支払いはしましょう。
3. 弁護士に介入してもらう
穏便に解決したいという方は、まずは、弁護士に間に入ってもらって相手女性と交渉してもらう方法があります。弁護士に依頼するメリットとしては、今後の解決策を相手と交渉してくれるだけでなく、既に支払ってしまった金銭の返還請求も含めて折り合いをつけてくれます。弁護士には守秘義務がありますので、情報が会社や家族などの外部に漏れることはありません。何より、弁護士に相手女性との交渉の窓口となってもらえることで、直接やり取りをする必要もなくなるので、ストレスが大きく軽減するというメリットもあります。
また、妊娠したことが分かる資料の提示や、示談や和解の方法で署名取り交わしを求めても相手女性が応じない場合や、金銭の要求だけが継続してくる場合には、弁護士を通してタイ警察に被害報告をしてもらうという選択肢もあります。有力な証拠が多ければ多いほど、タイ警察が詐欺や脅迫などの刑事事件として立件してくれる可能性がありますが、女性が「詐欺罪や脅迫罪等の刑事責任を免れたい」と考えることによって、妊娠に纏わる金銭請求を取り下げる可能性が高まることです。弁護士が介入することで警察官が協力して相手を警察署に呼び出してくれることが考えられます。そうなれば相手も冷静になり、警察介入で法的に有効な合意書を作成してもらい、双方で署名をすることによって事件の解決へ進みます。
◆ まとめ
性的関係を持ったタイ人女性から、急に妊娠の事実を告げられた際には、文化の違いもあるため、相手の言う事が「タイだしそうなのかな」と勘違いして対応をしてしまうおそれがあります。男性は冷静に正確な判断ができずに間違った対応をしてしまうと、どんどん解決が困難な方にいってしまうため、タイ人女性に妊娠したと告げられた場合には、一旦立ち止まって「タイ在住支援法律事務所」があることを思い出してください。妊娠トラブルに遭ってしまった場合には、慎重な対応が求められます。1人で抱え込まずに早期の段階でご相談ください。